Lenny Breau レニー・ブルー / Five O’Clock Bells
俳優のジャック・レモンがアクターズ・スタジオ・インタビューに出演した際のこと、自身がアルコール依存症だったことを告白した瞬間に、聞き手のジェームズ・リプトンが心底から驚いた顔をした瞬間が忘れられない。
「酒とバラの日々」の話をしていると、ふとジャックはさらっと自身の過去を語った。ジェームズは、想像だにしないことを突然に言い出したジャックの顔をじっと見つめた。テレビの画面を見ていても、ジェームズの驚きが伝わってくるようだった。
ジャック・レモンとリー・レミックが主演した映画「酒とバラの日々」は、アルコール依存症患者の夫婦を描く映画だが、見ているこちらがつらくなるような内容だった。
アルコール中毒によって仕事を失い、住む家を失う夫婦の行く末と、このテーマ音楽の美しいメロディとが、どうもうまく釣り合わない気がしてならかった。どうしてあの映画にこの音楽なのだろうというちょっとした思いは、今でも腑に落ちないままだ。
レニー・ブルーの「酒とバラの日々」を聞いていると、ほんの少しだけれども、その疑念を解くヒントが隠されているようにも感じる。幸せな空気を振りまくだけの「酒とバラの日々」ではない。むしろ苦い味がするからかもしれない。(大江田信)
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