The Sounds Orchestral サウンズ・オーケストラル / One More Time

Hi-Fi-Record2010-09-22

 ジョニー・ピアソンに興味があった。抑制が効いている控えめのピアノ演奏の人と思っていたので、サウンズ・オーケストラルのピアノがジョニー・ピアソンと知ってからは、余計に興味が湧いた。サウンズ・オーケストラルでの演奏は、別人のようにヒップだからだ。


 ふと思い立って調べてみると、1950年代の半ばにイギリスBBCに入社しており、その後の永い期間に渡って放送音楽の世界で仕事をした人とわかった。
 ラジオ番組「ミュージック・フォー・スウィートハーツ」では、ロマンス・イン・リズム・オーケストラなるバンドを指揮し、シャーリー・バッシーやレナ・ホーン、シラ・ブラックを迎えていたという。


 アメリカにおける放送と音楽との関わりは、例えばボブ・トンプソンやアル・カイオラ、クレバノフなどを調べる事で大分見えてきたように思うし、ドイツにおける場合もウェルナー・ミューラーを追っかけてみて、いくらかわかってきた。イギリスの事情は、こうしてジョニー・ピアソンを通して初めて出会った。それぞれ共通するところや、違うところがある。


 イギリスのポップス界の大プロデューサー、パイ・レコードのジョン・シュレーダーと組んで60年代の初頭にスタートしたのがサウンズ・オーケストラル。64年暮れに全英5位、翌65年には全米10位まで上昇した「Cast Fate to the WInd」(風の吹くまま)のヒットを放ったというから、狙いは当ったのだろう。おそらく主導権はジョン・シュレーダーが持っていたに違いない。


 日本では「朝もやの渚」と邦題が用意された作品は、BBCのテレビドラマのためにかかれたテーマ音楽だった。1971年に、イギリスのシングル・チャートで8位まで上昇している。これが彼の代表作。この時期から個人名でリリースするようになったアルバムは、サウンズ・オーケストラルとは発売元を違えている。本格的な独り立ちを実現したということなのだろう。


 ジャズ・フレイバーたっぷりに、くっきりとしたビートを従えて時代のヒット曲を巧みにカバーするサウンズ・オーケストラルらしさがくっきりと発揮されたアルバムをどうぞ。(大江田信)


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