Erroll Garner エロール・ガーナー / Gemin

Hi-Fi-Record2010-09-23

 このアルバムでもそうだが、グングンと前に進む推進力のあるリズムが、エロール・ガーナーの持ち味だ。ピアノのフレージングに耳が行くと言うよりも、上下左右に揺れるそのリズムに乗せられてしまって、あっと言う間に曲が終わってしまい、気がつくと爽快感が残っている。


 立ち止まったり進んだりして、なんとも言えないギクシャクした感じがのこるセロニアス・モンクのソロ・ピアノの味わいとは、随分とは違う。リズミカルに前に進んで行くバド・パウエルの音楽をもう少し骨太にしてわかりやすくしたようなピアノのようにも聞こえるが、パド・パウエルには感じられ無い、くねくねと動くなまめかしさが、エロール・ガーナーのピアノを特徴づけているように思う。


 エロール・ガーナーは、生涯のほとんどを自ら主宰するトリオ、またはソロの演奏で通した。
 生涯にわたって楽譜が読めなかったとするエピソードも残されている。それが仮に真実だとして、彼にソロやトリオというスタイルを選ばせたのかもしれないと考えると、巨人のナイーヴさが垣間見えるような気がして、いかにも微笑ましい。(大江田信)



試聴はこちらから。