Dr. Buzzard’s Original Savannah Band / I’ll Play The Fool

Hi-Fi-Record2010-09-24

シングル・ヴァージョンという言葉がある。


シングルで発売されたヴァージョンと
アルバムに収録されたヴァージョンで
アレンジやヴォーカルを違うものにしているときに
使われる言葉だ。


シングルだけのヴァージョンといっても
おおまかに言ってふたつの違いが存在する。


ひとつは
新たにスタジオ入りして
アレンジやテンポ、ヴォーカルなどを
完全に(あるいは一部)違うものにしてしまうパターン。


もうひとつは
同じ録音を使ってシングルを作るのだが
ラジオに乗りやすい音にするために
ヴォーカルやベースを強調するリミックス、
もしくは
長いイントロや間奏を編集で取り去ってしまうパターン。


後者を
すでにある音源を編集するという意味で
エディットと表現したりする。


びっくりするのは
「この曲にはこれがなくちゃダメでしょ」という部分まで
シングル化の際に取り去ってしまうパターンが
決してすくなくないことだ。


有名なところでは
アーチー・ベル&ザ・ドレルズの「タイトゥン・アップ」がそう。
あの有名な
ベースがブンブンブブブンブンブンと唸る
ファンキーなラインをずべてカット。


いきなり
スネアのタタタンから
歌というかアーチー・ベルの自己紹介に入っていくという
シングル・エディットになっている。


もともとのヴァージョンもたいして長くないんだから
その編集っていったいどうなの? とも思うのだが、
当時実際にアメリカのAMラジオから流れていたのは
イントロの短いヴァージョンだったのだ。
その事実は重いし、興味深い。


オリジナル・サヴァンナ・バンドの
「アイル・プレイ・ザ・フール」も
アルバム・ヴァージョンからすると大胆なイントロのカットが行われている。


アルバム・ヴァージョンでの
徐々に摩天楼にすべりこむ高揚感が
すぱっと省かれてしまったという感じるか、
ダンスフロアまでの距離がその分近まったと感じるか、
印象は分かれるかもしれないが、
最近のぼくは
このすぐに踊れるヴァージョンも大好きだ。


4、5回まわってニャンと鳴く その15 松永良平