Patti Page パティ・ペイジ / Gentle On My Mind

Hi-Fi-Record2010-09-26

 収録の「Green Green Grass Of Home」、邦題では「思い出のグリーン・グラス」。


  ずっと昔から不思議な歌だなあと思っている曲のひとつ。獄中の囚人の一夜の夢が歌われる。なにしろリアルに死刑執行を目前にした囚人の歌なのだ。


 汽車に乗って昔のままの故郷に帰ると、両親や恋人が暖かく迎えてくれたと歌うや、目が覚めたら自分の周りには牢獄の壁があり、主人公はあらためて獄中にいることを自覚する。しかもその日は死刑執行の日だという。目前には老神父がいる。


 これがヒット曲なのだから不思議だ。


 もっと不思議なのは、「あと25分」という歌で、これはタイトルのまま、あと25分で絞首刑を迎える囚人の心境を歌ったものだ。そんな曲をジョニー・キャッシュがカリフォルニアの州立フォルサム刑務所で歌い、聴衆(囚人だ)からやんやの喝采を受けるライヴ・アルバムがある。
 これもまた、よくわからない。



 どこにも行き場のない現実を抱えた主人公=囚人が、懐かしく美しくふるさとを夢想するプロセスに聞き手は共感するのだろうか。
 歌を聴きながらもっとピンとくることができれば、もっともっと歌の世界に入っていけるのだろうにと悔しい思いを持ちながら、パティ・ペイジの暖かい声を聞く。(大江田信)



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