Los Indios Tabajaras / The Many-Splendored Guitars Of Los Indio

Hi-Fi-Record2010-10-02

 ハイファイのサイトでは、ロス・インディオス・タバハラスという二人の兄弟のことをこんな風に紹介している。「ブラジルのジャングル奥地でギターを拾った2人の男性が奏でた独創的なメロディ。その存在に注目し、「マリア・エレーナ」を弾かせてみたら世界的に大ヒット」というウワサはじつは仕組まれたもので、紹介をこう結んでいる。「……というのは、彼らを売り出すための都市伝説でした」。


 「ブラジルのジャングル奥地でギターを拾った2人の男性が奏でた独創的なメロディ」というくだりはアルバムのライナーに書いてあった文面。言い換えれば、これ以外のことが書いてないとも言えるライナーで、レコード会社の方で彼らをミステリアスな存在にして売り出そうとしたと思しきフシがプンプン匂う。


 本当にそうか?と思ってしまうクセがあるものだから、このストーリー仕立にも、なんだかだまされていると思う気持ちが抜けなかったのだが、その後に少しすっきりしたのは「マリア・エレーナ」が古くからのメキシコの曲だとわかった時だ。


 「マリア・エレーナ」は、メキシコのロレンソ・バルセラータが1932年に発表したワルツ。1936年製作のメキシコ映画「情熱のボムバ」(同年日本公開)において全面的に用いられた。


 この曲がアメリカに持ち込まれたのは1940年代の初頭のことで、ローレンス・ウェルクが自身のラジオ番組で紹介したのち、1941年には英語詞が書かれ、ボブ・エバリーの歌唱をフィーチャーしたジミー・ドーシー・オーケストラのレコードがヒットしたという。


 ロス・インディオス・タバハラスの演奏する「マリア・エレーナ」はメキシコで1958年にシングルがリリースされ、これが同国内で着実な売れ行きを示したことから1963年にアメリRCAがシングルのリリースを決めたとされる。
 同曲を含むアルバムは、すでに1958年にアメリカでリリースされていた。


 と、こうなると、がぜん真実味が湧いてくるというもの。
 それでもメキシコでの1958年のシングル・リリースから5年を経てアメリカでの最プッシュが始まるというあたりに、まだまだなにやら思いもかけぬドラマが秘められているようで、興味深い。
 ちなみにこの衣装も、彼らの本意ではなかったのだそうだ。(大江田信)
  


試聴はこちらから。