Everything Is Everything / Witchi Tai To

Hi-Fi-Record2010-10-06

「ウィチ・タイ・トゥ」。
ネイティヴ・アメリカンに伝わる民謡を素材にしたこの曲は
ハーパース・ビザールがカヴァーしていたことで
日本では90年代に
ソフトロックのリスナーの間で知名度が広がった印象があるが、
本国アメリカでは
60年代末にオリジナルが発表されて以来、
おどろくほど多くのアーティストにカヴァーされている。


この曲のオリジナルは
ネイティヴ・アメリカンの両親を持つ
ジャズ・サックス奏者ジム・ペッパーが
自分のルーツを探るべく作ったもの。


しかし、
この曲をカヴァーしたのは
そうした彼のルーツとは関係ないひとたちばかりだった。


遠くはるかな時代の
聞き慣れないメロディを
まるで自分が昔聴いた子守唄と錯覚するようにして
彼らは採り上げた。


「ウィチタイタイ……」と
失われた言語をまじないのように繰り返しながら
寄せては返す波のようにじわじわと盛り上がってくるこの曲に
自分でもわけのわからない感情の高ぶりを
呼び覚まされてしまうのだ。


それはもはや
民族とか宗教とか関係ない
大地とか地球とか
そういう気持ちのありようなのかもしれないし、
またはその正反対で
どんな人間にも宿る
心のふるさとを無意識に探り当てる
魔法の旋律をこの曲が持っているからかもしれない。


だからだろう。
この曲をカヴァーしたアーティストの多くが
シングルカットにこれを選んでいる。


4、5回まわってニャンと鳴く その21 松永良平