The Toys トーイズ / Silver Spoon
ぼくぐらいの世代(1968年生まれ)には
ビリー・ジョエルの「イノセント・マン」は
大事なアルバムだった。
ニューヨークのブロンクスに生まれ
ロングアイランドで育ったジョエルが
自分を育てた50年代後半から60年代初頭の音楽を
自分のなかで吸収して
きちんとしたオリジナル曲に仕立てた作品で
兄が買ったレコード(兄が結構なファンだった)を
ターンテーブルに勝手に乗せて聴いていた記憶がある。
オールディーズとは何なのかを
勉強するのではなく
気分で伝えてくれたのが
このアルバムだったのだ。
一番好きだったのは
「アップタウン・ガール」。
一曲目の「イージー・マネー」も
今聴くとシンプルなR&Bテイストがかっこいい。
ベートーヴェンの「月光」をモチーフにしたバラード
「ディス・ナイト」は
何枚目かのシングル・カットで
確か日本では何かのCMソングにもなっていたはずだ。
でも
まさかそれよりもずっと前に
「月光」をモチーフにした曲が
もうひとつあったとは知らなかった。
それが
このトーイズのシングルのB面「シルヴァー・スプーン」だ。
もともと「ラヴァーズ・コンチェルト」が
バッハを借用しているのだから
こういうことはあってもおかしくない。
問題は
ビリー・ジョエルが
この曲の存在を知っていたかどうかだ。
トーイズはニューヨークのグループなので
全国的にはヒットしなかったシングルとは言え、
この曲が彼の地元のラジオ局で流れた可能性はある。
盗作だなんて言うつもりはない。
それも含めてのトリビュートだったとしたら
あの曲の奥行きは
ぼくにとってはもっともっと深くなる。
ただそう言いたいのだ。
4、5回まわってニャンと鳴く その29 松永良平