The Toys トーイズ / Silver Spoon

Hi-Fi-Record2010-10-19

ぼくぐらいの世代(1968年生まれ)には
ビリー・ジョエルの「イノセント・マン」は
大事なアルバムだった。


ニューヨークのブロンクスに生まれ
ロングアイランドで育ったジョエルが
自分を育てた50年代後半から60年代初頭の音楽を
自分のなかで吸収して
きちんとしたオリジナル曲に仕立てた作品で
兄が買ったレコード(兄が結構なファンだった)を
ターンテーブルに勝手に乗せて聴いていた記憶がある。


オールディーズとは何なのかを
勉強するのではなく
気分で伝えてくれたのが
このアルバムだったのだ。


一番好きだったのは
「アップタウン・ガール」。
一曲目の「イージー・マネー」も
今聴くとシンプルなR&Bテイストがかっこいい。


ベートーヴェンの「月光」をモチーフにしたバラード
「ディス・ナイト」は
何枚目かのシングル・カットで
確か日本では何かのCMソングにもなっていたはずだ。


でも
まさかそれよりもずっと前に
「月光」をモチーフにした曲が
もうひとつあったとは知らなかった。


それが
このトーイズのシングルのB面「シルヴァー・スプーン」だ。
もともと「ラヴァーズ・コンチェルト」が
バッハを借用しているのだから
こういうことはあってもおかしくない。


問題は
ビリー・ジョエル
この曲の存在を知っていたかどうかだ。


トーイズはニューヨークのグループなので
全国的にはヒットしなかったシングルとは言え、
この曲が彼の地元のラジオ局で流れた可能性はある。


盗作だなんて言うつもりはない。


それも含めてのトリビュートだったとしたら
あの曲の奥行きは
ぼくにとってはもっともっと深くなる。
ただそう言いたいのだ。


4、5回まわってニャンと鳴く その29 松永良平