The Moments モーメンツ / Walk Right In

Hi-Fi-Record2010-10-21

 ウォーク・ライト・インは、エリック・ダーリン率いるフォーク・グループ、ルーフトップ・シンガーズによるポップ・ヒット。元々は戦前のブルース・シンガー、ガス・キャノンの持ち歌だったナンバーをアダプトしたものだ。


 エリックが古道具屋の片隅でガス・キャノン歌う所のSP盤を見つけ、大喜びで自宅に持ち帰ったところ、黒人の歌うレコードなんて持ち帰るんじゃないと母からいさめられたという。でも自分はこの唄が大好きで、ルーフトップ・シンガーズで歌ったヴァージョンが全米1位になったときには、自分の心に響いた音楽が多くの人の賛同を得たことが、とても嬉しかったと語っていた。


 ウォーク・ライト・インのカバーといえばドクター・フィールグッドのヴァージョンくらいしか思い浮かばないのも、そもそもあまりカバーの存在を意識していないからだろう。もうこれ以上に改変する余地が残っていない曲と思い込んでいたに違いない。
 そのせいもあって、こんなヴァージョンがあったなんてと、ちょっと驚いた。ルーフトップ・シンガーズのヴァージョンが60年代フォークのサウンドで今日化するという発想だったとすると、ここではA面ではフォーク・ロック、B面では黒いサックスがうねるロックンロールになっている。しかも同じオケときている。上ものが変わるだけで、こんなに印象が変わるなんて。

 
 ルーフトップ・シンガーズのウォーク・ライト・インが日本で最初にシングル発売された時の邦題は「それいけドンドン」。このタイトル、今にして思うと実に歌詞の内容を言い当てている気がする。(大江田信)



試聴はこちらから。