Hawaii Calls ハワイ・コールズ / Fire Goddess
ついこのあいだのこと、ハワイ・コールズのとあるアルバムの見出し文に、こう書いた。
「ハワイの幸せを世界に伝えた音楽」。
あとでネットに上がっているテキストを見て、我ながら言い得て妙だなと思った。
ハワイ・コールズとは、全世界に向けて放送され人気を博したラジオ番組のタイトル。そのタイトルをそのままアルバム・タイトルに用いて、あたかも一連のシリーズ・レコードのようにして編成した。内容はと言えば、ラジオの放送で用いられた音楽をダイジェストしたかのようなオムニバス・アルバムである。
ある時点からアメリカのロックが、自身のいらだちや満たされなさがテーマに扱われているとすると、ハワイの音楽ではそうした不幸せが歌われることがまず無い。
ハワイ・コールズの音楽の場合も、無論のこと、そうしたマイナスの方向を向いたものは無い。自らが暮らす自然を歌い、社会を歌い、感謝を捧げている。
いわば大いなる自画自賛の音楽。
50年代に一つのピークを迎えた観光客向けの要素の強かったハワイアンが、ハワイの文化全体をハワイ人自身の目によって再評価しようとしたハワイアン・ルネサンスを経験して以降も、こうした歌詞の面では変わりがない。
音楽面では随分と変わって来ているのに、歌詞の面では変わらず精神を継承しているようだ。
こちらもハワイ・コールズのアルバムの一つ。
ハワイの素朴な宗教信仰を表現する音楽を数曲ほど織り込みながらまとめたもので、いつものアルバムに比べると、やや堅い。ただしその宗教的な音楽もフィールド・レコーディングされたものと比べると、天と地ほどの違いがある。洗練の極みと言ってもいいほどに、上品に演奏される。
いつもに比べるとややエキゾチズムが際立つ感触だが、これもまた「ハワイの幸せを世界に伝えた音楽」として聴いていいと思う。(大江田信)
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