Peter, Paul And Mary // Tiny Sparrow / Big Boat

Hi-Fi-Record2010-11-01

 シングル盤を巡る様々については、松永クンの「4、5回まわってニャンと鳴く」に興味深いことが山ほど書かれているので、もちろんそちらをバッチリ読んで頂くとして、ここではちょっとしたささやかなフシギをひとつ。

 
 ピーター、ポール&マリーは、1958年3月19日に設立されたワーナー・ブラザーズ・レコードにおいて、60年代初頭のエヴァリー・ブラザースに続き、60年代中期の会社経営を担う役割を果たしたグループだ。
 数々のシングルヒットを放つと同時に、アルバムに移行し始めていたマーケットを先導するように、複数のアルバムをチャートの上位に送り込んだ。


 その彼らがワーナーで発表したシングル盤には、ジャケット、英語で言うところのピクチャー・スリーヴを伴うものが2作品しかない。
 これがそのうちの1枚。もう1枚の方はというと、どこかしら彼らを模した人形を三体描いたイラストによるもの。
 ジャケットがアーチスト・プロモーションに寄与するという考え方は既に生まれていたはずと思うが、これほどの大ヒットを放ったアーチストにジャケット付きシングルが2作品しかない。しかもそのうちの一つは、人形のイラストだし、こちらのジャケット付きの楽曲は、それほどに知名度のあるものではない。
 いかにも不思議な気がする。


 ピーター、ポール&マリーは、70年代初頭にワーナーを離れてのち、1995年に再びワーナーからアルバム「Life LInes」を発表するまで、数十年にわたって両者の関係が切れている。
 その間の彼らは、メジャー・レコード会社との契約を持たなかった。
 「Life LInes」発表の前年だったか、今は亡きマリー・トラヴァースが「次のアルバムはね、ワーナーからリリースなのよ」と、期待を込め、またほっとした安堵の声でつぶやいていた声が忘れられない。(大江田信)


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