Ernie Hecksher And His Fairmont Orchestra / The Dancing Sounds O

Hi-Fi-Record2010-11-03

テレビで「吉田類の酒場放浪記」を見ながらビールを飲んでいたら、「吉田類の今日は始球式」なるコーナーが始まった。吉田さんが横浜球場の横浜巨人戦の始球式で投げる様子を追っかける内容だった。


 この番組のBGの選曲が凝っているということは、前に一度ここに書いた。ちょうどボクのような世代に取って、あれ、この曲なんだったっけ?的なナンバーが、やたらと使われている。思い出せるときは気分がいいが、わからないときはどうにも口惜しい。こっちも楽しんでいるが、スタッフも方も楽しんでるじゃないの?と聴いてみたくもなる。テレビを見ている者としては、この曲、わかる?と軽い挑戦状を投げかけられているような気にもなるのだ。


 この日、横浜球場に吉田さんが到着するあたりの音楽はと言うと、キャロル・キングの「ナウ・アンド・フォーエバー」だった。
 全米女子プロ野球リーグの選手たちの奮闘を描いた1992年のアメリカ映画「プリティ・リーグ」の主題歌だ。野球場の場面の音楽に、「Take Me Out to the Ball Game」を使わずに、「ナウ・アンド・フォーエバー」を使う当たりが、この番組スタッフたるところ。今回は、見ていてすぐにわかったので気分良くビールを飲んだ。
 とはいえ一体、テレビを見ている何人の人が、キャロル・キングの「ナウ・アンド・フォーエバー」と気付くのだろうか、とも思う。やっぱり、音楽スタッフも楽しんでるとしか思えない。
 と、なんだかんだといいながら「吉田類の酒場放浪記」を見ながら飲むビールは、最高だ。


 テレビの番組中に流れている音楽を仕切っているスタッフを、音効さんという。音響効果の略だ。
 映像に音を添えることを、音を貼ると言う。これがなかなかに面白い仕事で、添えられた音楽によって映像が随分と違った印象になるものだ。
 音効さんが使う曲は、一般に知られすぎていてもいけないという制約が有る。メロディが知られすぎていると、それだけで一定の感情を伴ってしまう。
  "ありもの"の音楽を使いながら、一種のサウンドトラックに似た仕事をしていることになる。簡単なようでいて、なかなかに難しい仕事だろうなと思う。


 音効。実はこの仕事、いつかやってみたいと願い続けている。ボクの長年の夢でもある。
 いまさら仕事を変える訳にもいかないのだが、こんなサウンド、例えば「Bluesette」を聴いていると、アマチュア音効マインドが、むずっと動くのである。華やかで明快で、洒落ていて。(大江田信)


試聴はこちらから。