Stephen Bishop / Bish

Hi-Fi-Record2010-11-04

 過去に何回か来日しているステーヴィン・ビショップだが、2002年の来日公演を聴いたことがある。会場は、青山のブルーノートだった。
 薄暗いライトに照らされたシックなステージに、やや似つかわしくないラフな衣装で登場した彼は、アコギを片手に「ジャマイカの月の下で」を皮切りに自作曲を次々に歌った。

 
 歌われる作品の穏やかで落ち着いた雰囲気に比べて、演奏の合間に挟むトークがなかなかに騒がしく、それというものニホンの女のコたちが可愛い、キュートだ、素晴らしいと彼は盛んに繰り返したのだった。その様に真実みがあり、そしてまた可笑しくて、会場が沸いた。


 アメリカでは10代に入りオトナを自覚した女のコはしっかり自己を主張をすることが求められ、おバカに見える「カワイイ」振る舞いはおよそ卒業するのが常だ。世の男のコたちもそれをいかにも当然とした風に付き合うのだが、なんだ、ステーヴィン、ホントーはやっぱり「カワイイ」女のコが好きなんじゃないかと、多少の共感を持ちながら僕は彼のはしゃぎぶりを僕は眺めた。


 曲調とトークのタッチがおよそ違う人だと思うと同時に、それもまた彼の照れ隠しなのだろうと、ぼくは妙に納得した。
 ニックネーム、ビッシュをタイトルにしたこのアルバムを聴いていると、このときのことを思い出し、二枚目ぶりを気取り彼の姿に、ちょっとからかいを入れてみたくなる。もちろん良い曲ばかりの素敵なアルバムであることは、間違いないのだけれども。(大江田信)


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