Waldo De Los Rios / Symphonies For The Seventies

Hi-Fi-Record2010-12-08

 クラシックを素材に、ジャズやロックのリズムを折り込みながら演奏するポップス・オーケストラのレパートリーが、セミ・クラシック。


 クラシックのメロディをポップに転じるのは、1940年代頃から既に始まっていて、ボロディン作曲「ダッタン人の踊り」を元にした「ストレンジャー・イン・パラダイス」やバッハ作曲「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」を元にした「ラヴァース・コンチェルト」などチャート・ヒットとなったものもあるし、ボストン・ポップスのようなもともとクラシックを専門に演奏しているオーケストラが、ポップス・コンサートと銘打ってクラシックをアレンジした作品による演奏会を開くことある。ライト・ミュージックの伝統があるイギリスでも、そうした楽しみ方は珍しく無かったらしい。



 1970年には、アルゼンチン出身でスペインにおいて才能を開花させたワルド・デ・ロス・リオスが編曲し、ミゲル・リオスが歌唱したベートーヴェン作曲の交響曲第9番の第四楽章のメロディが全米チャートの14位まで上昇した。ついで1971年には、モーツァルトの響曲第40番ト短調K.550 第一楽章のメロディを用いたシングルを全米67位に送り込んでいる。
 こと、ここに及ぶにいたってクラシックがヒット・シングルになるんだとの驚きが広がり、ポール・モーリアやレイモン・ルフェーブル、アルフレッド・ハウゼ、カラベリ、フランク・プウルセルといったオーケストラによるセミ・クラシックのアルバムが後に続く事態を生んだということだ。



 ポップス・オーケストラによるセミ・クラシックは、ワルド・デ・ロス・リオスに始まり今に至るということ、そしてそれを最も雄弁に物語るアルバムが、つまるところこれなのだ。
 セミ・クラシックでは、だいたいにおいてメロディを主軸に【編集】が行なわれる。いまのところボクはワルド・デ・ロス・リオスの方法が、最も気に入っている。(大江田信)



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