Chad Mitchell チャド・ミッチェル / Himself

Hi-Fi-Record2010-12-09

 天真爛漫に自由奔放に生きたように見えるジャニス・ジョプリンが、実はひどく寂しがり屋だったことはよく知られている。誰かにそばにいてもらうことを好み、ひとりぼっちを怖がった。オフ・ステージでは酒を手放せず、それがエスカレートするとドラッグに向かった。


 ブルースが、彼女の好みの音楽だった。ブルースは、一人の極北ような歌詞を持つ音楽だ。孤独なジャニスの心は、孤独に裏打ちされている眼差しの歌を口ずさむことで、はじめて慰めを得たのかもしれない。


 心さびしい時には、さびしい歌を。逆療法のように見えて、その実、これが効果を生むのではないか。
 手に取りやすく、誰にでも効果があるとテレビがしたり顔に解く「癒し」は、嫌いだ。


 このところ、急に寒くなって来た。秋の出口だ。手軽なジャンパーだと肌寒い。
 なにやらはしゃいでいる街を横目に、首をすくめて歩くときに、耳にしたイヤホンから流れて来て一番似合う歌。
 例えばチャド・ミッチェルがボサノヴァのタッチのガット・ギターにのせてつぶやく「Quiet Room」はどうだろう。(大江田信)


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