Chad Mitchell チャド・ミッチェル / Himself
天真爛漫に自由奔放に生きたように見えるジャニス・ジョプリンが、実はひどく寂しがり屋だったことはよく知られている。誰かにそばにいてもらうことを好み、ひとりぼっちを怖がった。オフ・ステージでは酒を手放せず、それがエスカレートするとドラッグに向かった。
ブルースが、彼女の好みの音楽だった。ブルースは、一人の極北ような歌詞を持つ音楽だ。孤独なジャニスの心は、孤独に裏打ちされている眼差しの歌を口ずさむことで、はじめて慰めを得たのかもしれない。
心さびしい時には、さびしい歌を。逆療法のように見えて、その実、これが効果を生むのではないか。
手に取りやすく、誰にでも効果があるとテレビがしたり顔に解く「癒し」は、嫌いだ。
このところ、急に寒くなって来た。秋の出口だ。手軽なジャンパーだと肌寒い。
なにやらはしゃいでいる街を横目に、首をすくめて歩くときに、耳にしたイヤホンから流れて来て一番似合う歌。
例えばチャド・ミッチェルがボサノヴァのタッチのガット・ギターにのせてつぶやく「Quiet Room」はどうだろう。(大江田信)
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