Camarata カマラータ / Spring

Hi-Fi-Record2010-12-23

前回でシングル盤の連載を終わりにしたので
ブログを書くテーマがない。


そうだ。
歳末だし
あと何回かブログを書く日がありそうなので
今年の買付を
何回かに分けてざっと振り返りってみたい。


まずは冬から春にかけて。


最初の買付は1月の終わりだった。


現地在住の知り合いに
ドライバーをお願いするというスタイルで
ぼくがひとりで出かけた。


知り合いと言っても
はじめて会うひとだったが
大きなからだをした気持ちのいい青年だった。


7年間のアメリカでの勉強を終え
春には帰国して就職するのだという。


お店で買付をぼくがしている間
彼は車のなかで待っているのだが、
何をしているのかなと思ったら
本を読んでいた。


その本は
中山七里「さよならドビュッシー」で
日本でもすこし前に話題になっていたものだ。


おもしろそうだなと思って
そのことを大江田さんに話したら
ぼくが読むより先にハマってしまったようだ。
その熱気に当てられたせいで
まだぼくは読み進められずにいる。
もう年末なのに。


次の買付は3月。
大江田さんと一緒に行った。


宿泊するモーテルが安いことや、
ぼくが原稿仕事をアメリカに持ってきてしまったことで、
いくつかの街では
部屋を別々にした。


これまでは男同士相部屋で
なんの気遣いもせず寝転がっていたのだが、
別部屋にした途端、
妙なプライバシー意識が芽生えた感じで
どちらかの部屋で一緒に食事をしても
なんだかよそよそしくて
早々に部屋を去ってしまったりした。


この買付では
ぼくは初めての街に行き(大江田さんは約10年ぶり)、
おおいにエキサイトした。


大江田さんが
「ここは美味しいんだ」と言っていたハンバーガー屋が
10年のうちに
経営者がアジア系の若者たちに代わってしまったらしく
味が変わってしまったと嘆いていた。


ただ良いこともあった。


10年のうちに
新しくて活気あるインディペンデントな中古レコード屋
いくつか開店していたのだ。


街からレコード屋がなくなっても
レコードはなくならないのだから
やる気のある店ができれば
その街は甦るのだという実感を得た買付でもあった。


大きなレコードショーで再会した
なじみのディーラー(店もやっている)は
ニューオリンズに店を開くつもりだと言って
ぼくたちをおどろかせたが、
あの街だって
散逸したレコードを束ねる智慧と力が今は足りないだけで
いつか復活したっておかしくはないのだ。


(次の買付につづく)


今年はこんな買付をした 春 松永良平