Andy Williams / Sings Steve Allen
アンディ・ウィリアムスがケイデンスに在籍していた期間の音源を、まとめて聞く機会があった。
いろいろシチュエーションを変えて聞こうと思い立ち、iPodに入れてみて、通勤の電車の中でなんとなく聞いたり、スピーカーの前で集中して注意深く聞いてみたりした。
そうするうちに気がついたことがある。
ケイデンスに残されたアンディの音源は、50年代のもの。その時代の録音機器の性能ゆえのことなのかどうか、録音ミキサーの指示によるものか、ひどくマイクに近い場所で歌っている。深く息を吸い込むブレスの息づかいまで聞こえる。一息でどれくらい歌い続けいているのか、わかる。まるで耳元で歌ってくれているような感じがする。
それにしても、と驚いたのだが、実に歌がうまい。
この場合のうまいというのは、まずは声が自身の意図のもとにきちんとコントロールされていることだ。まるで器楽楽器のように、自分の声が扱われている。音程がぶれない。声の扱いに意図がある。
そして同時に感情が、乗っかっている。
感情によって声の表情が変わる。
声の表情と、声の器楽的なコントロールが、ある高みうえで行われていることを理解しながらボーカルを聞くことができる。それにしてもうまいと唸ることになる。
情に流されることもなく、理が勝つこともなく。
ちょっとびっくりの経験だった。
アンディ・ウィリアムスのクリスマス・レコードのことを考えていて、ふと思い出した。(大江田信)
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