The Country Gentlemen / Folk Session Inside

Hi-Fi-Record2011-01-12

 どこで読んだのか、かつて発売されていた日本盤のライナーノーツだったように思うのだが、収録の「Hearches」のコード進行が「世界は日の出を待っている」と同じだと書かれていたように記憶している。
 これがずっと気になっていた。


 あるDJパーティの際に、「Hearches」を選曲した。
 普段はカントリーやブルーグラスにそれほど反応を見せない方から、「これ何?」と尋ねてもらえて、それがとても嬉しかった。あのバンジョーの曲は何?と質問してくれた方もいた。
 思わず「世界は日の出を待っている」と同じコード進行なんですってと答えたら、そうかと返答をもらった。そうした答えで良かったものか、ちょっと心配だった。


 この曲、作家のクレジットから調べてみると、1930年代から演奏されて来たスタンダードとわかった。30年代初頭に発表されたテッド・ウィームスのオーケストラ演奏がいい。途中に挟まれるエルモ・タナーの口笛演奏が、なんとも小粋だ。これが当時の大ヒット版。
 またカントリー・ファンには、パッツィ・クラインの名唱がよく知られる。これが素晴らしい。ドゥーアップ・ファンにはマーセルズの歌唱が有名なようだ。おそらくアメリカではある年齢以上のポピュラー音楽ファンならば、誰もが知るスタンダードの一曲なのだろう。


 この「Hearches」と「世界は日の出を待っている」。いざ注意深く聴いてみると、コード進行は確かに似ている所が多い。
 冒頭と、その次に用いられるコード、そしてまた冒頭のコードに戻ってくる進行(これが共にそれぞれの歌の最大のキャッチーなポイント)が、なにより似ている。
 譜割りの数え方を意識せず、また細部の違いに目をつむれば、ほとんど同じと言っていいのかもしれない。


 「世界は日の出を待っている」を聴いている時にうずくものと同じ気分が、カントリー・ジェントルメンのこの演奏を聴いていると、よみがえる。
 早めのテンポ設定とか、ノリとか、あるいはそもそも器楽演奏が成せるわざなのだろうか。
 前出のそれぞれの演奏を聴いても感じないのに、何回聴いても、カントリー・ジェントルメンの「Hearches」にはむずっとくる。不思議だ。(大江田信)



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