Deodato デオダート / Prelude

Hi-Fi-Record2011-01-19

デオダートの曲で一番好きなのは
ダントツで
このアルバムに収録の「カーリー&キャロル」。


当時
デオダートがその才能と存在感にべた惚れだったという
カーリー・サイモンキャロル・キングに捧げた曲だという。


そんなに尊敬しているのなら
一緒に捧げるなよって声もあるかもしれないけど、
一緒にしてしまっているのが
この曲のおもしろいところでもある。


キャロル・キングだけに捧げたら
テーマのメロディはあれほどシンプルにならないだろうし、
カーリー・サイモンだけに捧げたら
センシティヴというか恥じらい感みたいなものが
薄れていたような気もする。


ふたつの憧れを
合体ロボにしたようなこの曲は
着想は不格好だが
結果的にはとても洒落ている。


そういう意味で
デオダートは
とてもモダンなデザイナーであるということも出来るだろう。


ところで
ぼくがこの曲のことを知ったのは
実はそんなに昔じゃない。


数年前
クレイジーケンバンドのギタリスト
小野瀬雅生さんが
自身のバンド、小野瀬雅生ショウのライヴで
「中学生のころにカヴァーしたかったけど
 難し過ぎて出来なかった曲を今やってみようコーナー!」と銘打って
ある夜に演奏したのを聴いたのが
まともにこの曲に向かい合った最初の体験だった。


衝撃を受けて
すぐにこのアルバムを買いに走った。


そして
デオダートのヴァージョンを聴いて
もう一回衝撃を受けた。


オリジナルには
ギターは一音も入ってないのだ。


フルートのフレーズをなぞってカヴァーしたのだと
頭では理解出来るが
ギタリストを志望する中学生の少年が
ギターのない曲をギターでなぞろうとしたのだという事実に
ぼくは打たれたのだった。(松永良平