Bonnie Koloc ボニー・コロック / Wild And Recluse

Hi-Fi-Record2011-01-26

 シンガー・ソングライターとしてカテゴライズされる音楽を見ていくと、個人的な心情の吐露作品(フォークの系譜)、自宅にこもって宅録された音楽〜そのスタジオ展開(ロックの系譜)、作家志望のアーチストがプレゼンテーションするための作品サンプル集(ポップの系譜)などが上げられる。それぞれの要素が絡まり合いながら作品に集約されるが、いずれにしても彼らは自分に軸足を置いて音楽を作る自作自演者だ。自分を歌う。


 ボニー・コロック。
 彼女自身が作品を書くことはまれ、もっぱら多くシンガーに徹しているということからすると、ソングライターと呼ぶには相応しくないのかもしれない。しかし彼女の音楽を聴くには、シンガー・ソングライター作品を聞き取る態度と同じでいい。


 歌の歌詞を自らに引き寄せて歌う、あるいは他人事ならぬ自分事として歌っているから。歌う自分の地熱のようなものが、音楽にしみ込んでいるから。


 そいういう風に歌を歌う人にプロデューサーが付いて、ポピュラリティのある大きな歌を与えた場合にどうなるのか。
 このアルバムを聞き取るのには、こうした立ち位置が相応しい。


 その後に同種のアルバムを作っていないことからして、彼女には満足のいく作品ではなかったのかもしれない。また残念ながら芳しい売り上げを上げることができず、彼女に同種の申し込みが無かったのかもしれない。


 それにしても正直な歌いっぷり。
 もう少しスノッブなところ、あるいは悲劇的、または演技者っぽい演出があってもよかったのかも。そんなドラマがあれば、ポップ・シンガーとして一皮むけたのかもしれない。
 虚飾とは無縁なものがフォークなのだと言ってしまえば、それまでなのだが。


 客観的には、歌えない。
 自分事として、歌ってしまう。
 そのように聞き取れる女性のアルバムは、シンガー・ソングライターのみならず、実はジャズやポップ・ヴォーカル作品にも、少なくない。女性が歌うゆえとも思うのだが、どうだろうか。(大江田信)



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