The Platters プラターズ / Encore 

Hi-Fi-Record2011-02-19

 かつてレコード会社勤をしていたころ、仕事をご一緒する機会の多い先輩が、大のプラターズ好きだった。
 プラターズの歴代のリード・ヴォーカルの中でも、トニー・ウィリアムスが大好きで、たびたび酒の席で「オンリー・ユー」とか「ユール・ネヴァー、ネヴァー・ノウ」の歌真似をしていた。


 歌に付き合いながら、たぶん幾ばくかのお世辞も言いながら、どこかしら居心地がわるかったことを覚えている。そのせいと言ってはなんだが、ボクはプラターズを避けて来た。


 きちんと調べてみると、興味深いグループだということがわかる。
 例えばヒットしたトワイライト・タイム。
 インストゥルメンタル・グループ、スリー・サンズの1944年のヒット曲で、作者はスリーサンズの面々とバック・ラム。
 当初はメロディだけだったこの曲にバック・ラムが歌詞を書き、プラターズが歌って1958年に全米1位のヒットとしている。
 「オンリー・ユー」や「グレート・プリテンダー」、「マジック・タッチ」を書いたのもバック・ラムだ。
 マネージャーが書いた作品を歌って複数の全米1位曲を獲得したグループである。


 同時にプラターズは、リヴァイヴァル・ヒットの名手でもあった。
 「ハーバー・ライト」は1937年のヒット。数多いカバーがあるなか、同曲を1960年に全米8位に送り込んだのは、プラターズだった。「煙が目にしみる」も1933年のミュージカル・ナンバー。
 恐らくの想像なのだが、これらもバック・ラムの選曲なのだろう。白人好みの古い曲を、黒人歌手に歌わせるというアイデアは、秀逸だ。


 どうもバック・ラムの手腕の跡が、そこかしこに見えるグループなのかもしれない。マネージメントとレコード会社と、バッチリとビジネスをしたことだろう。そうなると今度は歌い手たちが、取り残されることになる。バック・ラムとメンバーは、折り合いが悪かった。
 その後のプラターズの名前を使う権利をめぐる泥沼の裁判の様子を見ると、あながちこの想像も外れていないように思う。権利を誰が有しているのか、契約書には書かれていなかったのだろうか。



 と、ここまでは、余計な前置き。
 このアルバムを聴いていて、女性メンバーのゾラ・テイラーの声の良さ、パンチのあるダイナミックな歌唱に初めて気付いた。
 「Bark, Battle And Ball」なんて、それこそ最高だ。
ドゥー・ワップな曲もいい。
 Another Side of Plattersとでも言うべき魅力。そんな曲がチラッ、ホラッと混ざっていて、 楽しめるアルバムだった。(大江田信)



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