Rod McKuen ロッド・マッケン / Greatest Hits -2

Hi-Fi-Record2011-02-20

 小藤武門著、「S盤アワー わが青春のポップス」を読む。小藤氏は、かつてビクター音楽産業の社員だった方。1948年から1980年までビクターに在籍し、数々のヒット作を手がけた。戦後日本の洋楽黎明期に、レコード会社に働いた制作宣伝マンの奮闘記である。


 いくつもの興味深いことがら記されているなか、思わず目を引いたのが、映画「太陽はひとりぼっち」(1962年)のテーマ音楽制作のストーリーだ。
 地味な映画を売るために、日本の配給会社のスタッフとアタマを寄せ合い、考えついたのが、日本でのみ使われる主題歌を作ってしまうこと。即実行とばかりに、作編曲の寺岡真三氏に依頼して、イタリアン・ツイスト風のインストゥルメンタル曲の完パケが出来上がり、コレット・テンピア楽団が演奏する映画主題歌として売り出され、これが大ヒットした。


 コレット・テンピア楽団「太陽はひとりぼっち」は、60年代ポップスのコンピレーションには、必ず収録されるオールディーズの定番曲のひとつ。映画音楽の全集ものなどにも、必ずとっていいほど収録される。今でもそうだ。
 コレット=岡、テンピア=寺という意味で、「いかにもイタリアの楽団を想わせるネーミングである」とは、小藤氏の言である。どうやら日本製サントラだとは聞いていたけれども、こんなにはっきりと事実を知ったのは、初めてだった。
 公開に際して、オリジナル・サウンドトラックが外され、コレット・テンピア版が映画にダビングされたそうだ。


 実はボクも同様のレコードを作ったことがある。
 それは映画「マッドマックス」(1979年)の第一作の主題歌「マッドマックスのテーマ」。
 これが売れた。オリコンのシングルチャート20位代前半まで上昇し、30万枚以上のヒットになった。
 この曲は、日本製なのだ。歌ったのは、串田アキラさん。音楽を製作したのは、惣領泰則さん。なのだが全編英語で歌われているので、ちょっと聞いただけでは、日本録音とは気付かない。
 この企画の依頼元は、映画配給会社から依頼を受けた映画宣伝会社だった。宣伝ツールとして音楽を用意しようという試みだった。


 おもしろい企画を思い付くもんだなあと思った。ヒットしたとはいえ、ボクはなんだかちょっと後ろめたかった。
 今にして知ってみると、要するにこの種の企画には先駆者がいたのだとわかる。映画の宣伝の世界に生きてきた人たちには、日本製サウンドトラックという発想は、珍しくもなんともないのだということを、小藤さんの本を読んで思い知った。

 
 「禁じられた恋の島」「太陽がいっぱい」「夜霧のしのび逢い」なども、良く似た経緯で出来上がった日本独自のヒット曲である。
 「夜霧のしのび逢い」が日本で大ヒットをした頃、ヨーロッパの音楽ビジネスの世界では、思いもかけぬ売り方があるものと話題になったそうだ。


 ロッド・マッケンの「Love’s Been Good To Me」について、書くつもりだった。シナトラが歌ったのを聞いて、良い曲だなあと思っていたら、作者版がここにあった。素晴らしい曲が、素晴らしいヴォーカルで歌唱されている。
 小藤氏の本の話から結びつくと思って書き始めたのだが、どうもそれは難しい。ということで今日は、ここでお開きに。(大江田信)


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