The Four Freshmen フォー・フレッシュメン / Today Is Tomorrow!

Hi-Fi-Record2011-03-13

巨大地震のニュースを買付中のアメリカで聞き、
動揺が醒めやらない。


ニュースを聞いたのが
こちら時間の3月10日の夜で
翌日まで一睡も出来ず
ぼくも大江田さんも使い物にならなくなった。


だから
3月11日はアメリカでの買付も中止。


それでも
3月12日、
意を決して
買付に出かけた。


ぼくたちに出来るのは
これしかない。


顔なじみの店が
去年の夏に新しい場所に移転していた。


店を覗くと
見慣れない女の子。
あれ? 店主の彼は? と聞くと
「いつもはわたし日曜日(明日)の出勤なんだけど
 今日は彼が用事があるらしくて
 急遽交替したのよ」
と答えた。


眼鏡と黒髪
二の腕からちらりとタトゥーがのぞく。


平日はカイロプラクティックの受付をしているという彼女は
まだ若そうだが
古いR&Bにも興味津々ということで
年配の常連さんとも楽しそうに話をしていた。


60年代ガレージパンクやR&Bに絶大なシンパシーを寄せているこの店では
集まる常連も当然その世界の住人が多く、
ソニックスのテストプレスのレコード、おれ持ってんだ」とか
その手の話題で盛り上がっていた。


みんなもう
白髪だったりはげたりしている
いいおっさんばかりなのにね。


レコードの山をカウンターで会計していると
彼女がぼくたちに訊いてきた。


「ねえ、お店は日本なのよね?」
「ああ、そうだよ」


それは彼女なりに遠回しに
地震のニュースのことを訊いているのだ。
アメリカ人らしい不器用な礼儀のつかいかたなのだ。


「東京の渋谷なんだよ」
「ご家族は大丈夫だった?」
「ああ、みんな無事だった。ありがとう」
「ひどいニュースだわ。がんばってね」
「本当にね」
「ところでお店は実際にやっているの?」
「どういう意味?」
「ネットだけの店とかもあるじゃない」
「実際にやっているよ。ネットでも売上は結構あるけど」
「そうよね。やっぱり行っていろいろ見ないとね、レコード屋は楽しくないもんね!」


たぶん
深い意味もなく彼女は自分の思うところを
淡々としゃべってくれていたんだと思う。
でも
その余計な同情のない
かざらない言葉にぼくは心底感動して
泣きそうになってしまった。


今日まわった店で
アメリカ人のレコード店主から
やさしい言葉をかけられたのは
一度や二度ではなかった。(松永良平


===================================


昨日はハイファイは休業させていただきました。
でも今日からまた営業を開始しました。
ネットもいつものように更新して
音楽で世の中を手伝います。
そして
買付した最高のレコードを持って
ぼくたちもアメリカから帰ります。


その眼鏡の彼女が
「これこれ! このレコード最高なのよ!」と
思わず声をあげたレコードもその中には入ってます。


今日も明日も明後日も
よい音楽を。


よろしくお願いします。


ハイファイ・レコード・ストア一同