Little Feat リトル・フィート / Sailin’Shoes

Hi-Fi-Record2011-03-21

ハイファイの前を通る明治通り
以前からちょっと気になっているものがある。


このあたりの明治通りには
道の両端に大きな木が規則的な配列で植えられている。
夏ともなると
緑の傘をいっぱいに広げるのだが
今は春待ちな季節なので
はだかで寒そうにしている。


おや?と思ったのは
そのうちの一本だ。


はしごをかけたとしても
ちょっと届かなさそうな枝に
ひもで左右を結んだ運動靴が何足も
ぶらさがっているのだ。


……乾かしているのかな?


いやいや、
そんなわけはない。
乾かすんであれば、
もっと低くてもいいもの。


もうちょっと妄想してみよう。


あのあたりは
夜になるとスケボー・キッズたちの練習場みたいにもなっているのだが、
ひょっとして
そこでなんらかの勝負が行なわれているのだが、
そこに明治通りの王様として君臨している男の子がいて、
勝負に勝った戦利品として
敗者の靴を採り上げてあそこに吊るしているのではないか?


それともあれは
鳥や虫のように
ひとつの意志を持った靴たちが
ひとときの安息を得ている姿なのではないか?


リトル・フィートの「セイリン・シューズ」で
ブランコ漕いでるおばけみたいに。


……そんなわけないか。


いずれにせよ
その無数の靴は昨夜もあったし
おそらく雨の今夜も
ぶらさがっているはずだ。


世の中の雰囲気が
以前とがらっと変わってしまった今、
それでも変わらずに木の枝にぶらさがっている靴の群れは
奇妙な光景かもしれないが
ぼくにとって
いつもと変わらない日常を保証してくれる
ちょっとなごむ眺めになっている。


そのことに今
気がついた。(松永良平