Genoa Keawe ジェノア・ケアヴェ / Party Hulas
アメリカのディーラーや、ショップのオーナー達からメールが届く。アメリカでも大きく報道されている地震の情報を踏まえ、ハイファイのスタッフの安否確認、お見舞い、心配といった内容のものだ。
それぞれにとても有り難い思いと共に文面を読み、返信を書く。
そのなかでもいささか驚いたのは、ハワイの友人からのメールだった。というのもここ何年も音信が途絶えていたからで、その理由というのも高齢のお母さんの介護に彼の時間が取られるからだった。
本土ワシントン州に生まれたご両親が二世。彼は日系三世になる。お父さんは、日本語をしゃべることが出来た。お母さんは、教会のボランティア活動に熱心だった。
日本語が話せないけれども、日本人の気持ちは分かると彼はいつも言っていた。
「アメリカ人は、Me First You Last (自分が最初、貴方は最後)だけれども、日本人は You Frist Me Lastだ」と彼は言う。ハワイでのみ使われる「典型的なアメリカ白人」という表現を用いて、その種の人たちの思いやりの無い態度を、強く批判することもあった。
ハワイは、かつて大津波を経験したことがある。大きな被害を被ったハワイ島ヒロには、津波に関する資料を展示する博物館もある。カラオケやテリヤキと並んで、ツナミも今や英語である。
ハワイに暮らす彼のことだから、津波についての基本的な知識を持っていたとはいえ、このほどの映像は衝撃だったに違いない。こちらを思いやる言葉が並んでいた。何年ぶりになるのだろう、もしかすると5年を超える時間が経っているかもしれない。
何回かのメールのやりとがあってのち、彼からレコードを送ってもらうことになった。
ハイファイにレコードを送ることが、君たちに対しての一番の助けになるだろう。そんなコメントが、添えられていた。
ディーラーからレコードを買う。その時に何気なく交わしたほんの少しのやりとりが、後々に僕らにこうした厚意をもたらしてくれるとは思いもしなかった。
ジャズ・ファンの彼に付き合ってもらって一緒にライブを観たジェノア・ケアヴェのアルバムを。
会場はワイキキのマリオット・ホテル2階のプールサイドだった。夕暮れ時の美しい陽射しを思い出す。(大江田信)