Milt Buckner ミルト・バックナー / Mighty High

Hi-Fi-Record2011-03-27

以前にも書いたが、
震災以来
お店に見えるお客さんと
結構話し込んだりすることが多い。


お仕事やご自宅は大丈夫でしたか?
ご家族やお知り合いに被災されたかたは?
計画停電の影響は?
これからどうなるんでしょうね?


問いかけは型通りに見えても
答えは無数。
お客さんの数だけ
それぞれの事情があるのだと
今さらながら思い知ることになる。


印象深いのは
それぞれのみなさんが
自宅のレコードがどうなったかを
真っ先に報告してくれることだ。


先週あたりからは
被災地に近い東北や北関東エリアからの
ぽつぽつとご注文のメールもいただきはじめた。


こちらも気にかけてはいたのだが
先方の状況もわからないままでやきもきしているところに
「無事ですよ」と便りが届く。


オーダーの末尾に
短信が添えられていることも多い。


地震で家の瓦は落ちて割れたのに
レコードは無事でした、なんて
力強いユーモアを添えてくれているかたもあった。


そうなのだ。
ほかにも何人か
棚が倒れたり
CDが割れたりしたというお客さんはいらしたけど
レコードが割れて困ったというかたには
運良くまだお目にかかっていない。


SPレコードから
20世紀の新素材である塩化ヴィニールを主とした
EP、LP文化に切り替わるとき、
そのニューメディアの一番の特長は
長時間収録ということはもとより、
“割れにくい”ということだった。


だから
50年代〜60年代頭くらいまで
レコードのラベルに
“UNBREAKABLE”と書いてあるものはすくなくない。


50年も前の
その太鼓判の効力を
まさかこんなかたちで実感するとは思わなかった。


ミルト・バックナーのARGO盤。
ARGOのラベルには
ずいぶんあとの時代まで“UNBREAKABLE”の文字が居座っている。(松永良平