Ray Kinney And His Hawaiians / Sweet Hawaiian Moonlight
筋金入りのハワイアン・ファンのお客様が、店頭に見えた。
いつもいろいろとお教えを請う。さまざまなニュアンスが込められた話を伺うことが出来る。どんな本に書いてあることよりも、後々になっても覚えている。
ちょうど店頭に出す準備をしていたレイ・キニーのアルバムをお見せする。
「ああ、これはねえ、いいアルバムなんだよねえ。早津っちゃんとねえ、一緒に聞いてねえ」と仰る。早津っちゃんとは、1985年9月に逝去された音楽評論家の早津敏彦さんのことだ。ハワイアンを含め、南太平洋地域の文化の研究を専門にしておられた。書かれた本の多く、監修されたアルバムに掲載されたライナーのすべてが、ハワイアンを追う者にとって一流の内容だ。数年にわたって探しているけれども、未だ入手できない本もある。
お客様は、アルバムを手に取って感慨深げに、「(アルフレッド・)アカパもレイ・キニーのところにいてね。あれ、レイ・キニーと声が違うなあと思うと、アパカが歌っているんだよね」と仰る。その語り口に愛情があふれている。
機会あらば教えを乞いたいと身構えてしまう。失礼かなと思いつつも、多くのお客様が自身の愛する音楽を、楽しそうに語ってくれるので、ありがたく頂戴する。様々なお客様に、こうして教えていただいた。
今日の午後も、そんなひとときだった。
お客様のお住まいは、都心だ。「天気さえよければいつも歩いているよ。それが一番の健康法だ」と仰りながら、渋谷のハイファイまでいつも歩いてこられる。
「レコードが減らないんだよねえ。部屋にいっぱいなんだけれどもねえ」と、釣果が入ったレコード袋を手に楽しそうに帰宅された。(大江田信)
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