Franck Pourcel et Son Grand Orchestre / New Sound Tangos

Hi-Fi-Record2011-04-08

 仕事の用向きもあって、このところ家ではタンゴばかりを聴いている。
 通勤途中もタンゴ。ハイファイで仕事を終えた帰り道も、タンゴ。


 タンゴは1880年頃にアルゼンチンの首府、ブエノスアイレスの貧しい一画で生まれた。アルゼンチン国内でカタチが整えられ、時代の世界文化の中心地、フランスのパリに伝えられたのが1905年頃のこと。
 1920年代からパリで大いにもてはやされたタンゴは、ヨーロッパの各地に広がり、各国でタンゴが演奏され、新曲が作曲されるようになる。この時代に、日本で作曲されたタンゴもある。
 そうしたタンゴのもてはやされ方がアルゼンチンに伝わり、さらにアルゼンチンでのタンゴの盛り上がりに拍車をかけた。ブエノスアイレスを出て、パリに移り住む演奏家も現れた。
 タンゴは世界を股にかけた新しいトレンドになった。


 こうしてヨーロッパで演奏されたタンゴを、かつて戦後の日本ではコンチネンタル・タンゴと読んだ。またの呼び名はヨーロッパ・タンゴ。アルゼンチン・タンゴと区別するためだったとされているが、こうした呼び名を用いて来たのは日本だけ。いかに日本でタンゴが流行したのか、その証しでもある。


 簡単にいえばアルゼンチン・タンゴはコンボ演奏。コンチネンタル・タンゴは、オーケストラ演奏。
 アルゼンチン・タンゴの火を噴くようなバンドネオンの演奏が、コンチネンタル・タンゴでは、ヴァイオリンによって流麗に奏される。

 
 タンゴがヨーロッパで流行した背景には、男女が体を密着し合うタンゴのダンスが新鮮だったからという説がある。男女が一定の距離を置いていたそれまでのヨーロッパのダンスの歴史にとって、タンゴは非西欧的な型破りの踊りだったという。つまりお行儀のよかったダンスの世界に、もっとエッチな踊りが飛び込んで来たのだ。う〜ン、さもありなん。


 ヨーロッパのポップス・オーケストラでは、必ずと言っていいほどタンゴのアルバムを発表している。
 アルゼンチン・タンゴのように、エッチじゃないし、ドロドロしたものも無いが、オーケストラ編曲の素晴らしい技量が発揮される。


 こちらはフランク・プウルセルのタンゴ・アルバム。このセンチメンタリズムに、胸がキュンとなる。(大江田信)


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