The Groupies

Hi-Fi-Record2011-05-01

これまた先日のこと。
お客さんから質問を受けた。


「このお店に
 こういうインタビューを録音したような
 レコードは他にもありますか?」


レコードについての
いろんなタイプの質問を受ける機会は多いけど
これにはちょっとびっくりした。
特定のアーティストのインタビューを収録したものが
ほしいという意味でもないらしい。


しかも質問をしているのは
まじめそうな
まだ若い女性だ。


彼女が手にしていたのは
すこし前にお店にだした
50年代の人気司会者アーサー・ゴッドフリーが
子どもたちにインタビューを試みているレコードだった。


英語が理解できなくても、
あどけなさやかわいらしさ、
子ども特有の突飛な発想なんかが伝わるだろうと思って
買付したのだ。
ジャケもかわいかったし。


アメリカでは
そういったレコードのために
“Miscellenious”、すなわち“その他”というコーナーが用意されている。
その昔にはモンドとも呼ばれた珍奇なものもあるが
業務用というか実務的というか
まじめなレコードも少なくない。


もっと言うと、
磁気テープの簡易化、小型化により
カセットテープレコーダーという画期的なメディアが一般化するまでは
レコードというのは
文字通り“記録(レコード)する”メディアとして重宝されていたわけで、
朗読や説明、インタビューなどを収録した作品が存在するのは
芸術的目的というより
実務的目的の方が大きかった場合もあるのだ。


お店にあるレコードで
彼女に何とかおすすめできそうかなと思ったのは
60年代末に実在した
ルーピー娘たちの本音トークを収録したこの作品だった。


興味深そうに見てくれたけど
お買い上げには至らず。


「お医者さんが患者さんと対話しているレコードがあると
 聞いたことがあるんですけど」


そこで気がついたのだが
たぶん彼女は興味本位で探しているのではなくて
なにか研究か論文の目的があるのかもしれない。


そして
そんな作品は
決してCDにも
ダウンロードにもならないのだ。


レコードというメディアの持つ意味と価値を
ぼくはまたしても思い知った。(松永良平