The Hotmud Family / Stone Mountain Wobble
アルバムを手に取った理由は、冒頭にダラス・ラグが収録されていたから。
オリジナルは1920年代の後期に活躍したテキサスのブルースバンド、ダラス・ストリング・バンドの演奏だ。リーダーにブルース・マンドリン奏者のコーリー・ジョーンズを擁する3人組のストリング・バンドで、実に素晴らしいブルース・インストルメンタルを演奏する。なかでもこのダラス・ラグが抜群に楽しい。メロディも伴奏のベースも、シンコペーションするリズムの楽しさに溢れている。コードの変化を分散和音的に追いかけつつ、そこに組み込まれるちょっと叙情的なフレーズ。機械体操をするようなカクカクした感じと、メロディアスに流れる感じとが、絶妙に対比される。
いくつかのバンドがこの曲をコピーしているが、なかなかコレというのに出会わないし、そもそもコピーしているバンドの数も多くない(と思う)。
それなのでこのホットマッド・ファミリーのアルバムを手にして、むずっと来た。
一聴して思わずはっとしたのが、マンドリンの音色がコリー・ジョーンズの演奏の響きととてもよく似ていたことだ。
ホットマッド・ファミリーのレコードを見ると、演奏しているのは紅一点のスザンヌ・エドモンソン。手にしているのは、バンジョー・マンドリンである。
まさかオリジナル版のコリー・ジョーンズも、バンジョー・マンドリンを使っていたのだろうかと思わせる程に、よく似ている。音の残響の感じとか、コロコロっと転がる丸っこい響きとか。
1900年代から20年代くらいにかけて、マンドリンはアメリカでブームになったという。この時点でバンジョー・マンドリンが販売されているとは考えにくいと思うのだが、さて、どうなのだろう。
いずれにしてもホットマッド・ファミリーのメンバーが、少なくともこの時点で50年近く古い音楽に楽しみを見いだしつつ、それを自分たちのセンスで再構築している様子が、ぼくは楽しい。これくらいの感じのカバーもいいなあと思った次第だ。
ほかの曲もそれぞれ楽しい。どうぞハイファイのホームページから試聴してみてください。(大江田信)
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