The Kingston Trio キングストン・トリオ / Tom Dooley

Hi-Fi-Record2011-05-13

 おとといの続き。

 ギャビーにとって初めてのソロ・アルバム・レコーディングといえば、よく知られるブラウン・ギャビーではなく、1962年にデイヴ・ガードによって録音されたもの。発売元が見つからずお蔵入りになってしまった音源が、1978年にハワイの名門レーベル、フラから「ピュア・ギャビー」としてリリースされた。
 70年代に高まったギャビー人気にあやかってリリースされたことになってしまったが、録音はすでに16年も前に終えていた。


 このアルバムの企画を思い立ったのが、デイヴ・ガードだ。このジャケット写真の一番右側の人物。フォーク・グループ、キングストン・トリオのリーダーである。
 1958年に「トム・ドゥーリー」によって全米1位を獲得、その後もヒットを放ち続けたものの、どうやらトリオが進み始めたコマーシャル路線と相容れなかったようで、60年代初頭にバンドを脱退している。


 デイヴは、ハワイ生まれ。バンドを抜けた彼は、ハワイに戻った。そしてギャビーのアルバムを録音している。のちのモダン・フォーク・カルテットのジェリー・イエスターも、アルバム制作に参加した。


 カリブ海の音楽を含め、今日で言うところのアメリカーナ的な視線を持ってフォーク・ソングをレパートリーとしていたデイヴ・ガード在籍時代のキングストン・トリオの音楽と、デイヴがギャビーの音楽にひかれていたこととは、矛盾しない。そうして振り返ってみると、ああ、そうなのかと腑に落ちる点が多々見いだせるはずだ。
 デイヴ・ガード時代のキングストン・トリオのレパートリーを再検証してみたいと思い始めている。おそらく内側からアメリカを探す旅ではなく、外側からアメリカを探す旅が浮かび上がってくるのだろうと思う。(大江田信)