Ry Cooder ライ・クーダー / Into The Purple Valley

Hi-Fi-Record2011-05-14

 昨日の続き。


 キングストン・トリオの初期レパートリーに顕著に見られるのは、カリプソを含めたカリブ海の音楽の影響だ。
 50年代の中頃から後半にかけて、アメリカのポップ・チャートでは、ハリー・ベラフォンテをはじめとして、カリプソを歌うシンガーの作品がチャート・インしている。キングストン・トリオもその一翼を担ったアーチストとして、紹介されることも多い。


 初期キングストン・トリオのレパートリーの構成が、アメリカの外側からアメリカを眺めることだとすれば、翻ってアメリカの内側からアメリカを旅した音楽アーチスト(同時代には、こちらのタイプの方が多い)となると、例えば初期のライ・クーダーを思い出すことになるだろう。彼の初期の音楽には、古典的なルーツ音楽を、見事に時代のロックに昇華した。
 最近になってライ・クーダーのヴァージョンと、オリジナルのヴァージョンと、そのどちらも好きだというのは、なかなかに曰く言いがたく気分がいいものだと、改めて思う。古典と、古典を現代的にリフレッシュしたもの、その両方を聞き比べて、単なるカバーにはとどまらない何かを見いだしたときには、時代に共振しているような喜びを感じる。


 アメリカ内部の旅を一段落したライ・クーダーに、外から見る視線を与えたアーチストの一人が、ギャビー・パヒヌイだったとする見方もあり得るかもしれない。その後のライ・クーダーは、メキシコ、キューバへと旅立っていった。(大江田信)


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