Caterina Valente And Silvio Francesco / Go Latin!

Hi-Fi-Record2011-05-18

 毎日がウェルナー・ミューラー漬けだったのは、確か去年の春のこと。CD4枚組101曲の選集にまとまり発売に漕ぎ着けたのが、ちょうど今頃だったか。
 その後にちょっと趣向の違うボックス・セットの仕事をしたのちに、今年になってこんどはアルフレッド・ハウゼ漬けの毎日となった。
 そちらが一段落して始まったのが、こんどはカテリーナ・ヴァレンテ漬けの毎日。ハイファイが休みの日には、朝から晩まで彼女の声を聴いている。


 なにしろ山ほどの音源がある人だ。レコードの数も相当数に登るのだが、世界中で発売されたカテリーナ・ヴァレンテの全アナログ盤を写真入りでまとめたディスコグラフィがドイツで発売されていることを知って、注文した。早く届かないものかと、やきもきしながら待っているところ。


 なにしろ歌が上手い。数多くの作品でプロデューサーを努めたウェルナー・ミューラーとのレコーディング・セッションのみならず、ジョン・キーティングやエドムンド・ロスやスタンリー・ブラックなど、かつて60年代に第一線で活躍したオーケストラをバックに行なったどのレコーディングでも、決して気を抜いていない。高いテンションの中で、せめぎあいにも似た演奏が繰り広げられる。スカッとはっきりとした明瞭なヴォーカルが、彼女の持ち味だ。


 ああ、こういうキャラの人で、こういうレコーディングに命をかけていたのかなと思っていたら、ひと味違う、ほっと安らぐアルバムを見つけた。
 シルヴィア・フランチェスコは、彼女の弟。数本のギターをバックにした親密な空気の録音が行なわれている。どこかしら穏やかなラテン。これがとてもいい。絶品。


 ウェルナー・ミューラーにしても、アルフレッド・ハウゼにしても、カテリーナ・ヴァレンテにしても、ドイツの音楽だ。ドイツ・デッカ、またはポリドールに残された音源。こうしてずっと聴いていると、アメリカのポピュラー音楽とは少しまた違う音楽センスというか、音楽を作り出す精神のありかの違いのようなものが感じられ、とても興味深い。ドイツのポピュラー音楽からは、実に晴れやかでたくましい響きが聞こえるのである。(大江田信)


試聴はこちらから。