Bert Kaempfert And His Orchestra / April In Portugal
このところドイツづいている。
このベルト・ケンプフェルトのアルバムを聴きながら、なんだかいつものベルケンと違うとふと思った。よく聴いてみると、管楽器の響きが少なく、まるでフランク・チャックスフィールドのようなストリング・オーケストラの響きが耳に残る。トランペットやベースの音など、ベルケンのサウンドの意匠ともいうべきものが、聞こえない。
ニューヨークに暮らすベルケンの娘さんが運営するサイトで調べてみると、どうやらこれがベルケンのファースト・アルバムらしい。ドイツでは1958年に「PORTUGAL FADO, WINE & SUNSHINE」のタイトルで発表された作品ということだ。今回ハイファイに入荷したのは、そのアメリカ盤。
50年代のカテリーナ・ヴァレンテ、60年代のベルケン、70年代のジェームス・ラスト。ドイツ・ポピュラー音楽の大スターたち。70年代のジェームス・ラストの人気たるや、ビートルズを凌ぐほどだったというからすごい。ちょっと想像がつかないかもしれない。ぼくも最近になって、やっと腑に落ちるようになった。
ドイツのポピュラー音楽史について、詳しい資料を読んでみたいと思うのだが、日本語で書かれた文章は北中正和さんが書かれた概論くらいしかない。むしろアーチストそれぞれの履歴を追うことから見えてくるものが大きいし、またこのところベア・ファミリーから続々とリリースされている60年代のドイツ・ポピュラー音楽のコンピレーションを聴いていると、おぼろげながらではあるものの様子が伺い知れる。思いもかけず役に立つのが、クラシック関係の資料だ。
デビュー・アルバムは、どのアーチストの場合でも興味深いとは、よく言ったもの。ベルケンのデビュー作は、同時代イギリスやフランスのポップス・オーケストラ直系のサウンドだった。(大江田信)
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