Eydie Gorme イーディ・ゴーメ / Eydie
収録されている「恋のフェニックス」。ジム・ウェッブの作詞作曲による作品だ。堺正章が歌った「さらば恋人」の原案のような曲なんて言うと、両方を知っている方には、ふと微笑んでいただけるかもしれないけれど。
ジム・ウェッブの書いた歌詞では、主人公は男性だ。彼女と二人で暮らしているアパートを出て、一人で旅をはじめる男の想いが歌われる。今頃、彼女はランチをしながら僕のことを思い出すだろうとか、夜になっても帰ってこないことを知って泣くことだろうなどと、ロサンゼルスの街に残して来た彼女の風景を主人公が思い描く。時間の経過が、東に向かって通り抜けていく街々の名前と共に暗示される。
この歌を、女性のイーディ・ゴーメが歌う。
主人公が女になるように歌詞が書き換えられている。
そもそもは男を主人公にして書かれた歌を、女性を主人公に変えて歌われることが、英語のポピュラー音楽の場合にはしばしばある。ビートルズのイエスタディを歌う女性シンガーは、数多い。その場合は、自分のもとを去った人物は、男の設定に変えられる。
日本語の歌の場合に、主人公の男女を入れ替えて歌うという場面には、出会わない。そうしたことが可能となるのは、英語では男と女がHeからSheへと簡単に入れ替えられるからなのだろうか。
男を捨てて、旅に出る女。家に残されるのが、一人の男。
イーディ・ゴーメが自身のファースト・ネームを記した1968年発表のアルバム冒頭に配したのは、そういう歌だ。(大江田 信)
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