Central Park Sheiks / Honeysuckle Rose

Hi-Fi-Record2011-05-28

 思いもかけない店の店内BGMで、セントラル・パーク・シークスの「Shipwrecked Man」を聴いた。


 フレーズをアンサンブルしながら組み立てられたアコギによるイントロが流れて来て、あれ、聴いたことがあるぞと思った。
 曲が始まってみると、やはりセントラル・パーク・シークスだ。ああ、あのアルバムの冒頭の一曲目だと思いつく。ニューヨークのセントラル・パークで撮影されたジャケットの写真が想い浮かぶ。


 ビル街の一画にある小さな眼鏡屋さん。道路に面する全面ガラス張りの窓が、街のぞよめきを遮断する静かな店内は、ちょっとした異空間だ。眼鏡のフレームが所狭しと置かれた店内で、顔に当てながら選んでいたら流れて来たセントラル・パーク・シークス。この場に似合うなと思う。


 続いて流れて来たのは、大好きな「ラ・ビキナ」。メキシコ生まれの曲だが、南米一帯で広く愛されているようで、膨大な数のカバー・バージョンがある。コスタリカのバンド、エディトゥスの演奏が素晴らしい。まだエディトゥスのそれとわかる前、ありとあらゆるカバー・ヴァージョンを聴いたことがある。探し当てた時には、とてもうれしかったっけ。


 いま流れているのは、コーラスによる「ラ・ビキナ」。これは持っていないなあ、いい選曲だなあとおもってお店の人に尋ねると、なんとあろうことか、「大江田さんが選曲したんですよ」と言われた。
 忘れていた。とすると、このコーラスの「ラ・ビキナ」の音源は、僕は持っているのか、家のどこにあるんだろうか。


 どうもいけない。
 選曲を仕事にしているのだから、それも今までに膨大な数の音源を扱って来ているのだから、少しは忘れていてもしょうがないとは思うが、最近になってこの手の忘れ物が多いのだ。それにしても「いい選曲ですね」とお店の人に言うなんて、あんまりだなあと失笑した。


 いつも音楽を聴いている場所と違う環境で聴くと、同じ音楽でも違って聞こえる。
 たぶんそれってよくあること。その不思議を、恥ずかしい思いと共に経験した。(大江田信)