Keith Carradine キース・キャラダイン / I’m Easy

Hi-Fi-Record2011-06-03

先週おどろいたことを昨日書いたので
今日は今週おどろいたことをひとつ。


去年
「バード☆シット」「ハロルドとモード」という
アメリカン・ニューシネマの番外地に咲いた名作映画を
ロードショー公開してくれたZIGGY FILMSの
今年の企画が発表になったそうだ。


すでに
映画ファンの間では
先月あたりからひそかにウワサになっていたらしいが、
その2作とは
ロバート・アルトマン監督の「ナッシュビル」!
そして
テレンス・マリック監督の美しい「天国の日々」!


天国の日々」は
日本でもDVDが出ていたけど
ナッシュビル」は
輸入盤でしかDVDが出ていなかったので
「やった!」と声をあげているひとが多いはず。


なにしろ
日本では初公開時に
伝説的なほど不入りだったためか
DVDはおろか
VHS、LDでも
一度も字幕付きでソフト化されたことがないのだ。


何を隠そう
ハイファイで買付に行くようになった2001年、
ぼくの最初の目当ては
なんとかして「ナッシュビル」を(VHSで)買うぞというものだった。


そして
初夏のある日
ある街のレコード屋の片隅で
偶然にも中古のVHS(2本組)を見つけて
小躍りをしたのだ。


ところが
どうも首尾よくことが運びすぎた。


実は
そのVHSを
ぼくが見ることはなかったのだ。


その街から次の街への飛行機移動のとき
どういうわけか
缶ビールをスーツケースのなかに入れていた(してはいけないことです)。


今でこそ
そんなことをすれば
気圧のせいで
缶がスーツケース内で破裂するぞとわかるのだが、
そのときは旅の経験不足で
「もったいないから持っていこ」くらいの気持ちでしかなかったのだ。


次の街で
ホテルに着いて
スーツケースを空けて
がくぜんとした。


服も何もかもビールでびしょびしょ!


そして、そのびしょびしょには
ナッシュビル」のVHSも含まれていた。


服は洗濯すればなんとかなる。
スーツケースはビール臭いが
拭けばいいだろう。


だが問題は
長時間冠水したテープだ。
どうやらもう見られそうにないと悟り、
泣く泣くその街でテープを捨てた。


あれから10年か。

あらためて
輸入盤DVDが出たときにはすぐさまネットで購入し、
なんとか溜飲を下げたものの、
個人的なエピソードとしては
見られなかったVHSのほうがはるかに心に強くのこっている。


とにもかくにも
大きなスクリーンで
あの映画を見ることができるのは
絶対にしあわせのはず。


キース・キャラダインが劇中で歌い
大ヒット曲になった「アイム・イージー」を聴きに行こう。


今のところの予定では
公開は夏〜初秋頃らしい。(松永良平