Charlie Shoemake チャールズ・シューメイク / Sunstroke

Hi-Fi-Record2011-06-15

 海岸べりに運ばれたヴィヴラフォンの前に、短パンをはいた演奏者がマレットを持って座っている。そしてカメラの方を向いている。彼の足には砂がまみれているので、たぶんこの砂浜を歩いて、ここまでたどり着いているのだろう。1979年のレコードだし、間違っても合成されたデジタル・グラフィックということはあるまい。波打ち際が、楽器のほんの少し先に見える。おそらく写真に映り込むことを計算して、ヴィヴラフォンがここに置かれている。
 それにしても不思議なジャケットだと思う。


 こんなことを考えながらジャケットを見るのは、無粋かもしれないのだが、海辺にヴィヴィラフォンを持って来て、はたして大丈夫なのだろうかとつい心配をしてしまう。楽器の持ち主は拒まなかったのだろうかとか、運搬をして来たことが、楽器に悪い影響を与えなかっただろうかとか、このあとスタジオに持ち帰って、なにかトラブルは無かったのだろうかとか。


 要するにこのジャケットを見て、ぼくはぎょっとしたのである。だって海の塩風は楽器に厳禁だというではありませんか。


 レコードの音楽はというと、これがルーディ・ヴァンゲルダーのスタジオで録音されたストレート・アヘッドな4ビートジャズだった。スタイルは古いと言えば、古い。格別に新しい事をやろうとはしていないが、リズムのセンスが新しい。気持ちのいいリズムを踏まえながら、真摯にジャズしているレコードだ。
 

 という訳で、つい針を下ろしてレコードを聴いてしまったのである。
 そしてついでに、音楽を聴きながら感じるこの気分の良さは、まるで夕暮れ時の海辺のようだとふと思ってしまったのだ。おっと、ハメられてしまったのか。(大江田信)


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