Robin And Linda Williams / Dixie Highway Sign

Hi-Fi-Record2011-07-09

 かつてはあれほど熱心に通ったのに、もう何年もミネソタに行っていない。だからなのか普段は全くと行っていいほど忘れているくせに、こんな季節になるとマイケル・モンローの「Summer Rain」を思い出し、それと一緒に絡まった糸がほぐれるように、いくつかの典型的なミネソタの音楽を思い出す。
 

 典型的な音楽と言ったところで、それはボクにとっての話しに過ぎずないのだが、ミネソタということから条件反射のようにして思い出すのが、たとえばこのアルバムに収録の「Early」である。
 寂寥感が漂うワルツ。ほんの少し袖擦れ合っただけの街なのに、追慕の思いを巻き起こすメロディ。懐かしくて淋しい。


 もしかしてと思ってクレジットを見ると、グレッグ・ブラウンの書いた作品だった。
 グレッグ・ブラウンは、卓抜なワルツ書きだ。もちろんミネソタで活躍する作家であり、シンガー・ソングライターであり、レーベル・オーナーである。


 「ブルーグラス色が濃く聞こえるようで、芯にある同時代SSW感覚がうかがえる」とのサイト上の紹介コメントを書いたのはボクなのだが、これが本作品の核心だろうと思う。自分たちを育ててくれた音楽を捨てること無く、同時代に歩みをともにする作家の新作を歌う姿勢である。
 ロビン&リンダ・ウィリアムス夫妻の、初期作品には、そうした志向が感じられる。そのように依って立つ音楽の表現をしているミュージシャンは、今なお少なからずいる。このあたりはアメリカのルーツ・ミュージックの面白さの一つだろうと思う。(大江田信)


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