O.S.T. Alex North / A Streetcar Named Desire

パティ・スミスの
若き日のスナップショットを集めた本を買った。

一枚
とても印象的な写真があった。

若い彼女が
一枚のレコードをこちらに向けて
フレームに収まっている。

そのレコードに
見覚えがあった。

テネシー・ウィリアムス原作、
エリア・カザン監督の映画
「欲望という名の電車」。
そのオリジナル・サウンドトラックである10インチ。

パティ・スミスは
それをこちらに向けていた。

ぎくっ。

そのレコード
ちょうどこないだ
お店で出したところだったのよ。

それにしても
そのチョイス。

彼女の
詩人としての感性を
流行ではなく自分を生きる女性としての姿勢を
そしてそれゆえの孤独や傷つきやすさを
たった一枚のレコードで表現するとしたら、
まさにこの一枚だと思わざるをえない。

おそらく
とっさのヒトコマであるはずのその写真に
彼女が世界をつかむ力の片鱗が
色濃く表れているのだ。

素晴らしい映画音楽家アレックス・ノースは
現代的な不安や恐怖が巧みに塗り込みながら
それでもこの音楽を美しいものにしている。

アレックス・ノースは
あの「スパルタカス」のテーマを書いたひとでもある。

ぼくは
写真に映るパティ・スミスより
ずいぶん年上になってしまったが、
彼女みたいに
とっさに
自分のすべてを物語るようなレコードを
手に取って写真に収まることが出来るだろうか。（松永良平）