Bonnie Raitt / You Got To Be Ready For Love

Hi-Fi-Record2011-07-20

ジェリー・ラガヴォイが亡くなったという記事を
どこで読んだのか
つらつら思い出してみると
あれは先週の木曜日。


歯医者さんの待合室で
置いてあった新聞をたまたま広げて読んだら
訃報欄にラガヴォイの名前を見つけた。


アメリカ音楽界の超大物には違いないけれど
どちらかと言えばマニアックな名前が
日本の一般紙に訃報として載るのは異例な気がした。


享年80歳。


すぐれたソングライターであり
すぐれたプロデューサーであったラガヴォイ。


軽くリストを拾うだけでも
彼がかかわった名曲の多さにおどろく。


「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」(変名で)
「ピース・オブ・マイ・ハート」
クライ・ベイビー
「ムーヴ・ミー・ノー・マウンテン」……。


ダスティ・スプリングフィールド
アレサも歌い、
若いリスナーにも愛されているノーザン・ソウル・スタイルの名曲
「アイ・キャント・ウェイト・アンティル・アイ・シー・マイ・ベイビーズ・フェイス」も
彼が書いた曲なのだ。


とびきり洗練された曲を書いても
熱さがじわっと残るのがラガヴォイ印ではないだろうか。


その塩梅の良さが
彼の曲を
白人のシンガーがよく採り上げる結果にもなっている気がする。


自分で曲も書き、プロデュースもするが、
アーティストを自分の色に染め上げてしまうよりも、
他人の曲でも良いものがあれば推薦し、
そのひとの良さを引き出してあげるために何をすべきか、
みたいなことを考えるタイプだったのかも、とも思う。


3年ほど前にエイス・レコードから出た
彼の作品/プロデュース曲を編集したCD
「ジェリー・ラがヴォイ・ストーリー/タイム・イズ・オン・マイ・サイド」を
多彩な曲の色合いを楽しみながら
よく聴いていた。


いつだったか、
ハイファイに立ち寄った麻田浩さんと
エイス・レコードのソングライター・シリーズは良い、という話になった。


そのとき
麻田さんがイの一番に
「ジェリー・ラガヴォイのが良かった」と言ったのだ。


僭越ながら
「ぼくもです」と付け足させていただいた。


昼間のヒマなレコード屋
単なるだべり話だが
そういうことほど、よく覚えている。


ボニー・レイットとジェリー・ラガヴォイが組んだアルバム
「ストリートライツ」からのシングルを今日アップした。


ボニー・レイット
知られざるソウル・シンガー、
ルー・コートニーの曲を薦めたのは
おそらくラガヴォイだろう。


それはもう
尊敬すべき名采配だ。(松永良平