The String-A-Longs / Places I Remember
ぼくは中村とうようさんには
お会いしたことがない。
ライターの仕事をはじめてから
ミュージックマガジン編集部にも何度か伺っているが、
結局お見かけする機会もないままになってしまった。
数ある著作や文章で
読むべきものはいくつもあるだろう。
喜寿のパーティーで出席者に配布されたという非売品の自伝
「とうようず・クロニクル」だって是非読んでみたい。
でも
すぐに思い出したのは
数年前に出た本「中村とうようの収集百珍」。
氏が
人生のなかで愛してきたもの(レコード、楽器、骨董、雑貨類)を
一から百までずらっと並べて
にこにこしている(ように思える)不思議なカタログ本なのだ。
うまく言えないが、
愛しいものへの情熱をオーバードライヴさせて
コレクターとして成功も失敗も散財も重ねて
遠いところまできた、
そういうひとにしか出せない頑固な風流が
そこにはあった。
つきあいやすくはないかもしれないけど、
勝手に親しみを感じた。
この場を借りて追悼をとも思うが
それにふさわしい盤を見つけられない。
世界中の音楽を長くにわたって聴いてきた氏と
「収集百珍」を思い出しながら
ストリング・ア・ロングスのこの曲を聴くことにする。
ぼくなりの素朴な感傷として。(松永良平)