Sounds Orchestral サウンズ・オーケストラル / Go Home Girl
サウンズ・オーケストラルを初めて聞いたとき、ピアノがジョニー・ピアソンとは知らなかった。ジョニー・ピアソンのことは気になっていたので音源も持っていたのだが、ちょっと聞いただけではサウンズ・オーケストラルのピアノと、ジョニー・ピアソン名義の音源から聞こえるピアノとが同じ人の演奏とは思えなかったのだ。
ピアソン自身のピアノは、繊細だ。それがサウンズ・オーケストラルとなると、グンとリズムが跳ねるようになってくる。適度のあくがある。
そのあたりがプロデューサーのジョン・シュローダーのなせる技かなと思って、こんどはジョン・シュローダー名義のオーケストラ作品を聞いてみた。
すべてを並べてみると、同時期のジョン・シュローダー・オーケストラには華やかなオーケストラ・サウンドがあり、その室内楽版がサウンズ・オーケストラルのようだとわかる。ジョニー・ピアソンの美意識は、そこからはやや離れた場所にある。
どうやら60年代中期のイギリス音楽界では、ジョン・シュローダーの方が格上だったようだ。ジョンが考えた企画に、ジョニー・ピアソンがキャスティングされたと思しい。
ジョニー・ピアソンが主宰して音楽を作ると上品になるのだが、押しが弱い。ジョン・シュローダーはというと、存分に押しが強く、時としてやや品が悪い。
こうした二人のセンスが上手い具合に織り込まれ、調和しているのが、サウンズ・オーケストラルということになるのだろう。
数年間のジョンとジョニーの蜜月の後には、ジョニー・ピアソンはまた自身の名義の音楽づくりにもどる。テレビ音楽の仕事でヒットを飛ばし、またひとつ知名度を上げ、こんどはレコード作りではラリー・ペイジと組んだ。
このラリーもあくの強い人だ。このあたりがなんとも面白いのが、またの機会に。(大江田信)
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