エディ潘とスーパー・セッション・バンド/ベイサイド・スウィンガー
レコード会社に勤めていたころのことだ。
日頃お世話になっているラジオ局のプロデューサーの方が、珍しく怒っている。
どうやら、あるタレントさんにダブルブッキングがあったらしい。同じ日の同じ時間に在京のラジオ局二つから、同じタレントさんの声が流れた。
最近の事情は全くわからないが、かつてボクがレコード会社の人間としてラジオ局に出入りしているころは、ダブルブッキングは御法度中の御法度だった。番組のリアリティを、決定的に損なうからだ。
ダブルブッキングの責任は、スタッフにある。ブッキングのきっかけは誰にあろうと、最終的な責任はスケジュールを管理するマネージャーにある。
プロデューサー氏は、冗談じゃないと怒り心頭の様子だ。こちらは何月何日の何時に放送されるときちんと説明しているんだ。向こうの放送がいつオン・エアされるのか、それくらい確認するのは当たり前だろう。仕事が甘いんだと怒る。
その点では彼は素晴らしいと、プロデューサー氏が誉めた。とあるシンガー・ソングライターの仕事一切を背負っているマネージャーだ。
どうしてですか?と聴いてみる。するとこんな答えが返って来た。
前の仕事から余り時間の余裕のないところに、番組をブッキングした。しかも自分の番組は生放送だ。大丈夫かなと案じていたら、そのマネージャーは出演のちょうど一週間前の同じ時間に、前の現場を出て、こちらの番組のスタジオまで、どれくらいの時間がかかるか、実際に動いて試してみたという。実地のリハーサルをした訳だ。
そこまでしてくれれば、自分として言うことはない。安心して当日、タレントさんの入りを待ったと言う言葉に、マネージャーへの信頼がにじんでいた。
レコード会社で仕事をするようになって、何年もたたないころの出来事だ。こういうレコードを聴いていると、思い出す。
ボクの隣の席に座っていた先輩が作っていたレコードだ。(大江田信)
試聴はこちらから。