Roger Williams ロジャー・ウィリアムス / Invites You To Dance

Hi-Fi-Record2011-07-28

 ハイファイがジャンル分けの用語として用いている言葉の一つに、"ラウンジ"がある。お茶をするホテルのティー・ラウンジや、軽くお酒も飲めて食事も出来るバー・ラウンジ向きの音楽を、"ラウンジ"としてカテゴライズしている。


 主として時代は50年代。今日よりも大きなサイズのソファーやテーブルなど家具が並べられ、テーブルとテーブルも適度に離れて置かれている広々としたスペース。そこに静かに流れている音楽。小さなコンボやピアノにプラス・アルファ的な演奏スタイル。こざっぱりとした編曲。そしてなによりリラクシンな気分を誘う音楽。
 こんなイメージだ。


 ラウンジという言葉が、そうした音楽をひとまとめにする用語として使われるようになってから、ここ20年は経っていない。かつての生活を知らないアメリカの若いレコード好きの世代が、夢見る思いを込めながら、ラウンジという言葉を当てはめ出した。
 ハイファイが用いている"ラウンジ"も、そうした系譜に則っているものだ。
 

 このところよくわかって来たのは、50年代の音楽家にとってホテル・ラウンジの出演は、その次の大きなチャンスをつかむ絶好の機会だったということだ。ホテルは音楽家が目指した重要なターゲットの一つだった。


 ロジャー・ウィリアムスは、ニューヨークのホテル出演を機にチャンスを掴み、レコード会社と契約した。ちょうど時代が実演からレコードに移り変わろうとしていたことも、功を奏している。その後の彼は、大スターになった。50年代から90年代までのビルボード・チャートを資料にして整理すると、アメリカのインストルメンタル演奏家としては、彼はビリー・ヴォーンレイ・コニフと並んで、ベスト3のアルバム・セラーである。


 彼のユーモアと茶目っ気が伝わる一枚。大仰な演奏ばかりが、ロジャー・ウィリアムスの持ち味ではないことが、よくわかる。(大江田信)
 

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