Clebanoff And His Orchestra / Lush, Latin And Bossa Nova Too!

Hi-Fi-Record2011-08-06

 クレバノフ・ストリングスには、日本録音の作品がある。
 ニック・ペリート指揮のパーシー・フェイス・オーケストラのコンサート・マスターとしてハーマン・クレバノフが来日した際に、日本のクラシック・オーケストラと共演したものだ。
 このアルバムを企画して、実際にレコーディングに立ち会った方のお話を伺ったことがある。


 クレバノフ・ストリングス名義のアルバムに用いられるスコアは、クレバノフ自身が所有し管理している。事前にアメリカのクレバノフから譜面が送られてきて、これを日本側スタッフが見ながらオーケストラの手配をした。
 バイオリンと指揮は、ハーマン・クレバノフ。ヴァイオリンを弾きながらの指揮だったそうだ。弦楽器を主とした室内アンサンブルの場合には、このようにコンサート・マスターが指揮をすることもある。クラシックのコンチェルトのようにして、オーケストラとクレバノフのヴァイオリンが同時に録音されたということだ。


 日本側で用意されたオーケストラは、日頃はクラシックを演奏している団体。コンサートマスターは、かつてボストン交響楽団に在籍していたアメリカ人の方だったが、それがクレバノフの前に出ると、直立不動になってしまったそうだ。最大限の敬意を表しながらクレバノフを「マエストロ」と呼んだという。


 クレバノフのヴァイオリンは、確かに素晴らしく上手い。後ろのオーケストラがラテンを弾こうが、ポピュラーを弾こうが、かまうこと無く超然としたところがあって、それが彼の芸風なのだろうと思う。サウンドからはいささか気難しい人のように想像してしまうのだが、実際はどうだったのだろう。
 なお日本でのレコーディングは、当初の予算の3倍もかかることになってしまって、会社から大目玉を食らっちゃってと、企画者の方は仰っておられた。


 豪奢で優雅でパーカッシヴとハイファイのコメントにある通りのヴァイオリンが、ボサノヴァのリズムとからむ作品。涼やかな気分がきちんと表現されている。ボサノヴァの何たるかが、確かに踏まえられているアルバムだ。(大江田信)


試聴はこちらから。