Roger Williams / Invites You To Dance

Hi-Fi-Record2011-08-20

 「朝もやの渚」のヒットで知られるジョニー・ピアソンが今年の3月20日に85歳で亡くなっていたことを知った。不幸中の幸いというと言葉はあたらないが、その死にあたってイギリス国内の複数のホームページに彼の詳細な履歴や業績が記された。



 BBCとともに歩んだ人だったとしてもいいのかもしれない。54年頃から数十年にわたって、BBCのラジオ、テレビで仕事をした。60年代にはサウンズ・オーケストラルでヒットを出し、70年代にはBBCのテレビドラマの音楽が当たった。ニュース番組の音楽を書くなど、60年代後半以降のイギリスでは、テレビから彼の音楽が流れない日は無いほどだったらしい。



 ジョニー・ピアソンの音楽には、特徴的なことがある。自分のピアノの音の使い方に巧みな自制があることだ。前に強く押し出すこともあれば、アンサンブルの中にうまく沈めていくことも多い。そうしてストリングス、管楽器、ピアノなどが少しづつメロディをトレースすることで、耳に飽きがこない。
 押しの強い音楽を追い求めているとは聞こえない。むしろ控え目で、つつましく、滋味深い響きがある。



 ジョニー・ピアソンがアンサンブルを考えるタイプのピアニストだとすると、ロジャー・ウィリアムスは華やかな技を放つ、いかにもソロ・プレイヤー然としたタイプの演奏家だ。
 音楽作りの発想には、ピアノコンチェルトの方法があるに違いないというのが、ボクの私見。ダンス・バンド風にアレンジしたという本アルバムでも、ピアノとオーケストラがコンチェルト的に呼応する箇所が随所に盛り込まれている。(大江田信)



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