Chet Atkins チェット・アトキンス / Alone
ホルヘ・モレルというギタリストがいる。アルゼンチン出身で、ニューヨークを拠点に活動した。もともとはクラシック系のギタリストらしいのだが、アメリカではポピュラーをレパートリーにしているアルバムが数枚発売されていて、これを聞いて興味を持った。
だいたい彼のアルバムは、よく知られたメロディを織り込んだ曲目構成になっている。例えばいまハイファイに在庫しているアルバムには、「ムーンリヴァー」や「グラナダ」などが収録される。
そうしたどこかで聞いたことがあるに違いない曲が、彼の手にかかると今一度の新しい命を得ているように感じられる。基本はソロ演奏。多くのクラシック・ギターのために書かれた作品のようにして、たとえば「ムーンリヴァー」が演奏される。目新しいことをしようとか、変わったことをしようとは聞こえない。それでもメロディが新たな風合いを持ちながら、立ち上がる。それがいいのだ。
そのホルヘ・モレルの名前を、思いもかけない場所で見つけたので、おもわずはっとした。
チェット・アトキンスのアルバム「Alone」に収録されている「テイク・ファイヴ」を聞きながらジャケットを眺めていたら、そこにホルヘ・モレルの名前があった。
アルバム「Alone」は、全くの独り演奏アルバム。ギター一本で何が出来るのかを、そっと追求している。そこに収録された「テイク・ファイヴ」のアレンジを、ホルヘ・モレルが提供していたのだった。
二つのアルバムを聴き比べると、両者の同じところと違うところがわかる。二人をつないでいるものもわかる。チェットとホルヘ、ふたりともが好きな僕には、楽しい聞き比べの時間となった。(大江田信)
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