The Modern Folk Quartet / Changes

Hi-Fi-Record2011-08-23

モダン・フォーク・カルテットこと
MFQのこのレコードを
若いころに結構探して買った。


20代半ばくらいの話だから
90年代前半。


ジョン・サイモンが好きで
彼がプロデュースしたサイラス・ファーラーの「アイランズ」を買って、
さらにさかのぼりたくなって
ほうぼう探してという流れじゃなかったか。


正直な感想を書くと、
その良さに対して
どうもピンとこないいところがあった。


モダン・フォークを
ジャズのハーモニーでやるというふれこみを
勝手に拡大解釈して
あたまのなかをよからぬ期待で満たしていた。


モダン・ジャズを
フォークのハーモニーでやってるくらいの勘違いで。


今聴くと
このアルバムの良さ、
一見保守的なフォークの様式に則っていながら
そこにジャズのセンスを持ち込む
とてもスリリングな実験をしようとしていることが
昔よりはすこしだけわかる。


わずかなスキを見つけて
一点突破のような勢いで突き抜けて
さっと視界を広く開けさせてくれる「シング・アウト」という曲が好きだ。


フォーク界の一種の伝統様式である“シング・アウト”を名乗る曲を
あえて一曲目に持ってきながら、
その鮮烈なオープン・ハーモニーには
だれもついてこれっこないでしょと
うれしそうに笑う
いたずらっ子のような革新がある。


「チェンジズ」というタイトルのアルバムは
彼らが変えようとした時代を物語るだけでなく、
聴き手であるぼくのちょっとした変化も
言い得ている。


今日
そんな気がした。(松永良平