Jimmie Haskell and His Orchestra / Teen Love Themes 

Hi-Fi-Record2012-07-27

 夏の定番曲と言えば、「夏の日の恋」。


 タタタ/タタタ/タタタ/タタタと始まる三連のリズムと、二拍目と四拍目に入ってくるドラムの響き。そしてほどなく始まるストリングスのメロディ。メロディの隙間を埋めるように聞こえるホルンの音色。全体に軽いエコー感があるのもいい。


 と、ここまでオトも聞かずに、記憶の中のパーシー・フェイス・オーケストラのサウンドを、思い出しながら書いた。
 それにしてもこのイントロのつくり。これはイントロというものの基本形ではないかと思うくらいに、よくできている。


 まさか、間違っていることを書いていたら嫌だなと思って、オトを確かめようとしようとした。そして、まぁいいかなと思い直した。
 レコードに針を落として実際に聞こえてくるオトと、耳の奥で響いているオトと。どっちがホントかと問われたとしたら、耳の奥で響いている方ですと、そう答えてもいい時もあるような気がする。そっちの方が僕の「夏の日の恋」だからだ。


 この曲が体に入っていたからだろう、数年前にジミー・ハスケルの「夏の日の恋」を始めて聞いたときは、心底びっくりした。
 なにしろこのジミー・ハスケル版は、パーシー・フェイスとよく似ている。
 違いを見いだすとすれば、ジミー・ハスケル版の方が、リズムの輪郭がくっきりしている。いや、はっきり言ってしまえば、ジミー・ハスケル版にはロックの感覚があるのだ。


 どうしてそうなったのか、ニューヨークで録音したパーシー・フェイスと、ロサンジェルスで録音したジミー・ハスケル、それぞれ使ったミュージシャンの違いに答えを見いだすことも出来るのかもしれない。
 それはそれとして、この瓜二つにして微妙な違いを秘めている二つの「夏の日の恋」。ジミー・ハスケル版を聞いてから以降は、ぼくの耳の奥で鳴っている「夏の日の恋」は、どこかロックっぽいものになった。


 記憶の中で響いている音楽が、現実の音楽とはすでに違ってしまっている場合がある。記憶のなかにある音の細部は、たぶんどこかで自分好みのものになってしまっている。
 それでいいと思う。
 それは記憶の退化ではなく、ぼくなりの好みを反映した音楽なのだろうと、密かに思っている。(大江田)


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